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山田一族の陰謀(upload.3.12/pm6:30)

前回アルバイトの事を書いたので、その続編としてアルバイトについて…。肉体労働ばかりだった自分のアルバイト歴にひとつだけ異質なものがまざっていた。それは高校最後のバイトで酒屋のバイトである。山田屋酒店という所にバイトに行った時の話だ。

下(しも)君と北島君という同級生と私の三人で行った。御歳暮のシーズンで酒の配達を山田一族と一緒に回るのだが、私は山田一族の当主の横にのっかるか、もしくはその奥さんを乗っけて車で走った。下君は山田一族のジジイをもっぱら乗っけて走り回った。北島君はその時免許がなかったので、山田一族の縁戚の兄ちゃんとスナックや飲み屋への配達が主なルートであったと思う。初めてスコップや一輪車を使わなず土に触らないで良いバイトである。しかも今までは人のいない山や川ばかりだったのが、福井市内を走るという自分にとっては初の経験である。心が躍らない筈はない。

だが、考えが甘い事をやがて知ることになった。働くという事は実はそんなに簡単な事ではなかったのである。バイトに行ってすぐに雪が降った。雪道の運転は生やさしいものではない。通行の多い道路はまだ良い。だが、たまにしか車の通らない道路は雪に覆われて、タイヤがスリップして立ち往生になる。勢いをつけて走れば良いが、家を探し探し走ると、どんどん低速になる。車を停止させた瞬間、もうスリップして動かないのだ。雪道の脱出方法はアクセルを踏みすぎてはいけない。ギアを駆動力の弱いセカンドに入れて前進し、少し動いたと思ったらすかさずバックで後ろに行き、後ろに後退した瞬間、ギアチェンジして前進する。まるで振り子のように少しずつ前進後退を繰り返し一気に勢いを付けて少々スリップしてもおかまいなしに前にすすむ。そうすればタイヤが空回りしないで進む事が出来る。

だが疲れる。何より疲れたのは山田一族郎党のキャラクターだった。慣れない運転で奥さんを横に乗っけていると、この奥さん、突然右、右、と叫んだかと思うと、あ、やっぱちがう、左と叫ぶ、繁華街を右へ左へと右往左往する。しかも一歩通行などおかまいなしに、そこ、そこ入って…と叫ぶ、車が通れるかどうかの狭い雪道を前進して行ったら袋小路で今度はバックで戻るってな事も珍しい事ではなかった。ある時、あっちこっちと振り回されている時、ガシャ!と変な音がした。駐車していた車のサイドミラーと乗っていたトラックのサイドミラーが当たった音だった。当時の車なんて可倒式のものではない。一気にミラーは吹っ飛んでもがれていた。あ〜〜やってもうた…としばし呆然とした瞬間、奥さんは突然叫んだ!逃げて〜〜〜!その言葉に釣られるようにして逃げてしまった。

当て逃げである。なんちゅう事だ。犯罪ではないか。清く美しく生きてきた自分の過去に汚点を残してしまったのである。いや、私の場合はまだ良い。下君なんてジジイと一緒に繁華街を回っていたものだから、ジジイが後ろを見てくれて、オーライ!オーライ!オーライ!と声をかけてくれる。オーライ!オーライ!オーライ!ガラガラガッシャ〜〜〜ン、、、ストーップ!衝突してからストップの声が掛かった。紳士洋服屋さんの看板がなぎ倒されていたそうである。当主はせっかちで常に走り回る。親せきの兄ちゃんは一族を罵倒しながら運転する。もう誰と乗っても心の安まる日はない。

アルバイトの期日が終わった時にはへとへとに疲れていた。最後に当主がアルバイト料をくれた。田中君はサイドミラーを壊したのでその分引いてある…といい、下君も看板なぎ倒し料を負担しなければならなかった。最後、倉庫を片づけて終わりという事になった。酒の管理がずさんなのは知っていた。みんなで完全に頭に来て、高そうな洋酒を懐に入れて持って帰った。既に時効であるが、純真な高校生に窃盗をはたらかせるに至った山田一族の罪は重い…と今でも思うのであった。

(ふゆき)

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